富士山の絶景ポイントと言われるところは数多くありますが、こちらもそのひとつ。今回の超私的聖地巡礼は、山梨県の忍野八海(おしのはっかい)をご紹介します。

忍野八海は、富士山の雪解け水が地下の溶岩の間で約20年の歳月をかけて湧水となって出てくる湧水池です。八海と呼ばれるのは、昔、富士講(富士山を巡る霊場詣で)が盛んに行われていた時代に、富士修験の霊場として、守護神の「八大竜王」を巡り水行を行うことから来ていると言われています。

seichi2414.jpg
昔から富士山を眺める絶景ポイントのひとつとしても知られています

その中でも一番有名な、涌池(わくいけ)の湧水は、青い澄んだ水がこんこんと湧き起こり、湧き上がる水の勢いで、水草がゆらゆらと揺れる様が、ずっと見ていても飽きない不思議な魅力をたたえています。涌池の水温は年平均約12度~13度、毎秒2.2立方メートルの湧水量があるそうです。

seichi2401.jpg
水深は3〜5mほどですが、奥に富士山噴火で作られた溶岩洞窟が繋がっているそうです

seichi2404.jpg
水面が湧水で揺れています

この景観と、水質の美しさから、早い時期(1934年)に国の天然記念物に指定され、また、1985年には、環境庁から全国名水百選に選定されています。更に、最近認定されたユネスコ世界文化遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一部としてこの忍野八海も登録されることになりました。

seichi2406.jpg

seichi2407.jpg

seichi2410.jpg
ゆらゆらゆれる水草が本当にキレイ

涌池は、忍野八海の中で一番賑やかな通りに面する池で、隣接していかにも昭和!なお土産屋さんが立ち並び、向かいには水車小屋なんかもあります。1980年代以降、この周辺の観光地ががどっと進み、現在は中国人などアジアからの団体観光客の定番観光コースになっていることもあり、この神秘的な湧水の色や流れの景観と、その周辺の俗っぽいギャップが、逆になんとも懐かしいような、これぞ日本というような、不思議な気分になります。

涌池や濁池の周辺には、複数の人工池や井戸などもあるそうで、その結果湧水の量が少しずつ減ってきている、という調査結果があったりもします。池の中には鯉などの魚がいて、(水質低下が起こるため禁止されているのですが)コインを池に落とす人も多く、ここでしかない、という景観を作っています。

seichi2408.jpg


seichi2409.jpg
澄んだブルーが美しい

吸い込まれるような泉に、まわりの木々が映り込み、更に不思議な景観が見られます。
ただ、まわりの看板も一緒になって映り込むので、そうしたものを写したくない場合には、ぐっと寄って撮影する必要があります。
seichi2412.jpg

そう言えばこういう経験、どこかでしたな〜と思ったら、中国の世界遺産・九寨溝(きゅうさいこう)に行ったとき、当時(10年以上前)成都から2泊3日マイクロバスで行くしかなかっためちゃめちゃ秘境のはずが、ものすごい中国人民観光客の数と、いかにもなポーズで写真を撮る人たちに圧倒されて、「神秘的な池」を想像していたわたしは、ものすごく驚いたんですが、それにちょっと似てました(笑)。九寨溝の池の大きさは、池というより湖ですし、規模も圧倒的に違いますが、なんかちょっと・・・中国人が好きなタイプの観光地なのかな、と思ったりして。

そんな観光客がいっぱい、俗っぽさも満開な忍野八海ですが、富士山の遠景と湧水の見事なコラボレーションで、それでもやっぱり行く価値のある、私の大好きな聖地のひとつ、となっています。

seichi2405.jpg
晴れた日はこんなにでっかく富士山が!


忍野八海への行き方

山梨県忍野村にある忍野八海へは、東京・横浜方面からだと高速バスで山中湖
方面に向かう行き方が一番ラクでオトクなアクセス方法。新宿駅から約140分
程度で到着します。または、富士急行「富士山駅」下車、士山駅から路線バス
内野行き、または「ふじっ湖号」で「役場前」バス停下車。駅から約25分。
詳しいアクセスは忍野村観光サイトよりどうぞ。

また、近隣にあるさかな公園の淡水魚専門の水族館県立富士湧水の里水族館が、
地味〜ですが、魚好きな方には隠れたオススメスポットです。
忍野八海周辺は、パワースポット的な要素を求めるよりも、観光客になりきって
名物のよもぎの焼き餅を食べながらゆるりと1日散策するのが楽しい過ごし方
かもしれません。