富士山の絶景ポイントと言われるところは数多くありますが、こちらもそのひとつ。今回の超私的聖地巡礼は、山梨県の忍野八海(おしのはっかい)をご紹介します。
忍野八海は、富士山の雪解け水が地下の溶岩の間で約20年の歳月をかけて湧水となって出てくる湧水池です。八海と呼ばれるのは、昔、富士講(富士山を巡る霊場詣で)が盛んに行われていた時代に、富士修験の霊場として、守護神の「八大竜王」を巡り水行を行うことから来ていると言われています。
昔から富士山を眺める絶景ポイントのひとつとしても知られています
その中でも一番有名な、涌池(わくいけ)の湧水は、青い澄んだ水がこんこんと湧き起こり、湧き上がる水の勢いで、水草がゆらゆらと揺れる様が、ずっと見ていても飽きない不思議な魅力をたたえています。涌池の水温は年平均約12度~13度、毎秒2.2立方メートルの湧水量があるそうです。
水深は3〜5mほどですが、奥に富士山噴火で作られた溶岩洞窟が繋がっているそうです
水面が湧水で揺れています
この景観と、水質の美しさから、早い時期(1934年)に国の天然記念物に指定され、また、1985年には、環境庁から全国名水百選に選定されています。更に、最近認定されたユネスコ世界文化遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一部としてこの忍野八海も登録されることになりました。
ゆらゆらゆれる水草が本当にキレイ
涌池は、忍野八海の中で一番賑やかな通りに面する池で、隣接していかにも昭和!なお土産屋さんが立ち並び、向かいには水車小屋なんかもあります。1980年代以降、この周辺の観光地ががどっと進み、現在は中国人などアジアからの団体観光客の定番観光コースになっていることもあり、この神秘的な湧水の色や流れの景観と、その周辺の俗っぽいギャップが、逆になんとも懐かしいような、これぞ日本というような、不思議な気分になります。
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山梨といえば、ぶどう?ほうとう?と食べ物ばかり思いつく私ですが、今回ご紹介するのは、食欲とは別世界?俗っぽさから離れたところにある場所、日蓮宗の総本山(祖山)の身延山久遠寺(みのぶさん・くおんじ)です。
身延山は、鎌倉時代に日蓮上人が久遠寺を開山したところで、今も多くの宿坊が残り、修行の場として使われる由緒正しく、雰囲気のあるところです。今は、久遠寺の奥の院までは高低差763mを7分間で上る
ロープウェイがあって、しかも駐車場からの坂道さえ、傾斜エレベーターでスイスイ。気軽に頂上までいくことができますが、そんな文明の利器がない頃は、傾斜の強いこの山を、一歩一歩上っていくその行為そのものが修行だったでしょうし、今ももちろんそういう方たちが少なからずいます。
空海が四国八十八箇所を巡り悟りを開いたように、仏教と修行と歩くということは、切っても切れない関係。いや、仏教に限らず、すべての世界中の宗教には、必ず聖地への巡礼路というものがあり、聖地そのものの素晴らしさも当然あるでしょうが、聖地への道のり、その距離、その時間こそが、本当は大事で、かけがえのないものなのだということを、古の昔から人々は本能的に知っていたのかもしれません。
さて、久遠寺の三門から本堂までに、菩提梯というものすごい斜度の石段があります。全287段。
ほとんど直角にしか見えない
これは、本当に凄い。あり得ない斜度です。しかし、いろいろと考えられて作られていて、南無妙法蓮華経の七文字になぞらえた7区画の階段を上っていくと涅槃に達するという、そういう仕組みだそう。
執事も注意勧告!
誰も上ってる人などいませんが、ここは人より秀でてみせるぞ!と張り切って上りはじめました。
・・・。やめときゃよかったってくらい冗談みたいな斜度です。
下が見えない・・・
なんとか上り切り、本堂へ。
久遠寺から山頂奥の院までは徒歩で3時間ほどかかります。もうあの梯子だけで精一杯、根性なしの私は、下りだけ修行することにして、上りは現代っ子らしい合理的な選択、ロープウェイを使いました。途中で鹿の親子を見かけたりしてほのぼの和みます。頂上に着いて展望台からは、富士山の頂が。もう夏山の富士山にはほとんど雪が残っていませんでしたが、ちゃんとその姿を拝むことができました。
最近ロープウェイがかっちょよくリニューアルされデッキができていました。
ここは、年に二回、富士山の頂上から太陽が上ってくるダイヤモンド富士が見られるところ。その時期には、ロープウェイも臨時営業して、御来光が楽しめるそうです。この身延山の少し先に、七面山という聖山があり、そこからのダイヤモンド富士はなんと、春分と秋分の日ピッタリに上ってくるそう。 しかしそこまでは完全な登山仕様で挑まないと難しい本気の南アルプス。でも一度は行ってみたいと思える神秘的な魅力を感じました。
奥の院からの帰りは、徒歩で。ここに千本杉といわれる場所があって、ここは本当にすごかった。いつまでもここにいたいと思えるほどの杉林。樹齢数百ねは超えてるだろうと思える素晴らしい木々。日蓮上人が植えたという杉の木も奥の院には残されていて、そんな昔からここにこの木々はいるんだな、ということ、そして本当に、過去と現在って繋がってるんだな、ということを感じる場所でした。
千本杉のあたり
奥の院からの帰り道、ヒノキのフィトンチッドの香りを全身で感じながらのんびりと降りてきて3時間。下りだけでも足がガクガクでしたが、素晴らしい時間。ロープウェイもよいですが、やはり上り下りどちらかはご自分の足で味わってみると、よりその場所が愛おしく、身近に感じるられると思います。
宿坊で精進料理を味わって、みなで白装束を纏って修行体験するのもいい経験。関東から近いところでここまで修験道を感じることができる場所は少ないと思います。<こころを静かに感じたいとき、自分をゆっくり見つめたいとき、ちょっと自分を追い込んでみたいときにこの場所はそれを受け止めてくれるところのように思います。
三門
行き方
新宿から直通バスもあり。約3時間半。 JR身延線 身延駅からバス。
高速は富士インターより車で約1時間ほど。
帰り道に富士宮焼きそばを食べつつ、立ち寄り湯で汗を流すのがオススメです☆