子供の頃、乗用車を買ったばかりの両親とロングドライブして旅をした思い出の地で、
そのときに見た、霧の中の塔や、別天地のような幻想的な雰囲気は、子供心ながら
不思議な印象をもっていたものです。
それからもう何十年も経った初夏に、諏訪湖のあたりからビーナスラインと呼ばれる
以前は有料道路だった眺望のよい道を走って目的地、美ヶ原高原を再訪したのでした。
久しぶりにそのことを思い出したのは、その地を題材にした一枚の星空写真がキッカケ。
その写真を見たとき、ああ、そうだ、私ここずっとまた行きたいと思ってたんだ、と思い出
したのでした。
私もそんな星空を見て、写真を撮れたらいいな。
そんな思いを胸に現地へ向かったのだけれど、なかなかどうして自然というのはそう簡単に
夢を実現させてはくれない・・・。当日は濃い雲が覆って時折雨が混じる不穏な天候。ここは
標高2000m近い高地にあるので、天気は完全に山岳気候で、下界の天気予報は、まったく
あてにならないのです。
雨と霧に煙る高原のベンチ
美ヶ原高原は、諸説あるようですが、江戸時代あたりの山火事で、山頂付近の森林がなく
なり草原となり、その後昭和の初めに牛の放牧が始まり、人の営みの中で今の光景が
保たれているのだそう。
なんでも「自然がいちばん!」って思いがちだけれど、豊かな自然の景色って、自然=何も
しないってことではなく、人の手が入って初めて成り立つ、というところもたくさんあるんですよね。
この牛さんがこの牧場で過ごすことができるのはたった1年だけなのだとか。
標高が2000m近い美ヶ原の牧場は、なんだか本当に天空にあるかのような景色が広がっています。
なんだか空も、大地も、何もかものスケール感が違うような。
霧がかかり、時折小雨も降るあいにくのコンディションと思いきや、それがまた幻想的な
風景をつくっていく。自然の演出は本当にすごい。
車でササーッと上ったからあまり実感はないけれど、やはり日本では標高2000mというのは、
ただそれだけで、山の世界。人よりも動物やお天道様がエライんだな、と感じます。
王ヶ頭というところに建つ電波塔。なんだか異次元風です
美ヶ原には数件のホテルや山小屋が建っていて、それぞれ車を降りてから少し歩いたり、
送迎バスが必要だったり、と気軽に行けない雰囲気があるのですが、それがまたなんとなく
「山」っぽさを演出していて素晴らしいなと思いました。
ちょっと立ち寄るのではなくて、ここは夜や早朝を過ごしてこそ、その美しさや素晴らしさ
が際立つのかもしれない。トレッキングというにはあまりにも気軽な、1時間程度の
お散歩をしながら、そんなことを思いました。もちろん、本格的に歩くのもオススメ。
険しい山を上る登山ではなく、尾根沿いを歩くトレッキングのルートもたくさんあるので
レインウェアをちゃんと仕込んで、滑らない靴を履いて、少しでもいいから歩いてみると
本当に別世界が待っている、そんな場所です。
朝、滞在したホテルで行われた無料の早朝ツアーに参加して、王ヶ鼻といわれる絶景ポイント
で、奇跡的に遠くの穂高岳と槍ヶ岳を見ることができました。(徒歩だと行きだけで1時間半
程度かかります)
この王ヶ鼻は、標高2008m。パワースポットとも言われるこの場所は、確かになんとなく
不思議な雰囲気がありました。
たくさんの石仏が、木曽御岳山方向を向いて建っていて、なんだか不思議。
そして、美ヶ原といえば、この美しの塔が知る人ぞ知るスポット。
このシルエットが入った星空の写真は、それはそれは美しい・・・。
いつか絶対ここでリベンジ満天の星写真を撮るぞ!と心に誓った今回の滞在でした。
美しの塔の鐘を鳴らすのはちょっとコツが要ります!
美ヶ原高原への行き方とオススメ山なので、やはり車がないと厳しい・・・とおもいきや、宿に申込をすれば、松本駅から送迎バスが出ていたりして、結構調べてみるといろいろな方法があります。特定の宿のご紹介になりますが、山本小屋ふるさと館は、サイトも見やすく、見た目のおみやげ屋の横の冴えない旅館風(スミマセン)とは思えない宿のホスピタリティがハンパなく素晴らしいと思えるホテルでしたので、おすすめさせていただきます☆私がオススメした散歩道コースはこちらに詳しく書かれてますのでご参考に!