高千穂峡は、その昔阿蘇火山活動の噴出した火砕流が、五ヶ瀬川に沿って帯状に流れ出し、 急激に冷却されたために柱状に固まってできた渓谷。下のこんな写真をどこかで見たことがある人も多いかもしれません。

seichi1501.jpg

これは、高千穂峡の中で最も有名だと思われる、真名井の滝。
貸しボートで近くまで寄ることができますが、それ以外は上から見るだけの、不思議な感じのする場所です。


seichi1502.jpg

こんな風に狭い水路が7kmにも渡って続いている高千穂峡。国の天然記念物にも指定されているそう。枕状に切り立ったこんな岩(枕状節理というそう)もあちこちに見られます。

seichi1503.jpg

けれど、阿蘇山からも近いこの場所を有名にしているのは、もうひとつ、神々が生まれた場所、神話のふるさととしてではないかと思います。「高千穂」は古事記や日本書紀そして風土記に、天孫降臨の地としてその名前が出てくる場所で、高千穂神社も、平安時代から続く、高千穂八十八社の総社として古くから祀られてきた神社。

この土地では、今も神楽の行事が執り行われていて、その神楽が素晴らしいため、現在は観光用の神楽殿というのを用意して、そこでほぼ毎晩、高千穂夜神楽というものが見られるようになっているそう。天岩戸伝説を神楽で表現する高千穂神楽は、国の指定重要無形民俗文化財として大切にされています。

seichi1504.jpg
高千穂神社の本殿

なかなか立派な感じのする神社で、この前にある夫婦杉っていうのが、また大きくて素敵な感じ。
けれど、私自身がここはすごい!と思って気に入ったのは、この神社ではなくて、天岩戸神社(あまのいわとじんじゃ)というところ。高千穂神社から車で少し移動したところにあるその神社の、更に先にある場所が、私の人生の中で、初めて?最高に「うわっ!ここ凄い!!ここ、神様いる〜!たぶんいっぱいいる!!」と思った場所なのです。



高千穂神社から車で20分程度離れたところにある天岩戸神社は、実は2つあって、ひとつは東本宮、そして対岸にある天岩戸(あまのいわと)神社西宮と言われるところ、更にその先にあるのが天安河原(あまのやすかわら)宮。

西宮は、「天岩戸」を聖域(神域)として祭っていて、拝殿があるだけで本殿がなく、その聖域である天岩戸を拝観できる場所は拝殿背後の拝観所からだけ。天岩戸は写真撮影も出来ない上に、入口はふさがれ、誰も(神主さんですら)入ったことがないらしいです。それほどまでに隠された天岩戸。古事記の中でも特に有名な伝説ですが、一応ここでおさらい。


天(あめ)の岩屋(いわや):「古事記物語」鈴木三重吉 (青空文庫版より)

日の神様「天照大神(あまてらすおおみかみ)」が弟君「須佐之男命(すさのおのみこと)」のいたずらにお怒りになり、「天岩戸」にお隠れになってしまわれます。
「天照大神」が岩屋戸(洞窟)に隠れられると天界・地上界は真っ暗闇となり、多くの疫病・災いが発生し沢山の悪霊が出て神々は大変困ってしまいます。

八百萬(やおよろず)の神々は集まって相談をし、岩屋戸の前に榊の木をたて勾玉や鏡を取付て、「天細女命(あまのうずめのみこと)」がみだらな格好をしておもしろおかしく踊ります。これを見た神々は大声で笑います。不思議に思った天照大神が顔を覗かせたところ、「手力男の命(たじからおのみこと)」が岩戸を押し開いて連れ出します。

岩屋戸には注連縄を張って封印し、入り口を塞いでいた岩の戸を「手力男の命」が投げ飛ばします。漸く天界と地上界は元のように明るくなりました。


という、まとめるとそういうお話なのですが、その岩屋戸がある、と言われている中でも有名なのがこの高千穂地方。(全国各地にこの天岩戸と言われる場所はある。伊勢にもありました)

で、その天岩戸を祀っているのが西宮。そしてもうひとつが「天岩屋(あまのいわや)」に隠れられた「天照大神」を巖から出てもらうため、神々が集まって相談したといわれる、「天安河原」。小さな祠がある洞窟みたいなところで、ここのご本尊が思兼神(おもいかねのかみ)=八百萬神。

天岩戸神社から徒歩10分位かな?岩戸川沿いに500m程川上へ行ったところの河原一帯が天安河原と伝わっています。その中心に間口40m奥行き30mの洞窟仰慕窟(ぎょうぼいわや)が有り、その中に天安河原宮がひっそりと祀られています。

seichi1505.jpg
こんな感じで川の水も美しい。

石を積むといいという言い伝えがあるのか、とにかくここには無数に石が積み重ねられていて、なんか独特の雰囲気があるのです。神様が八百万(やおよろず)、八百万とは、800万人?の神様っていうことではなくて、神様いっぱい!ってことらしいのですが、とにかくここで集まって会議をした、という場所。

ほの暗いその場所に入ってみたら、なんかゾクゾクっとしました。
あれ?ここ、なんかいる。

八百万、いるかも・・・。なんせ八百万の神様だからなー、ひとりぐらい背中とかにくっついてそう。そんな風に思えたりして。ここまで歩いて来る人なんて、高千穂を訪れる人の中でもかなりの物好きなので、私が行ったときには、誰も人がおらず、よりそんな神秘的な雰囲気が漂っていました。

seichi1506.jpg

今でもこの写真を見るとゾクッとするし、この暗い場所から河原方向への写真は、なんとなく撮らない方がよい気がして、カメラをそっとバッグにしまったことを思い出します。それほどまでに何かを感じる、私はあまり普段そういうことを感じないほうだと思っているのですが、ここだけは、今でも「あそこはなんかスゴかった!」と思える場所です。

また機会があれば再訪して、どんな感覚になるか試してみたいなーなんて思う、そんなところです。かなりマニアックですが、興味がある方は是非天岩戸神社の天安河原まで足を伸ばしてみてくださいね。




 高千穂地方への行き方

 高千穂は宮崎県にありますが、私は熊本から車で入りました。
 鉄道も今はなく、どちらにしても交通の便はあまりよくありません。
 レンタカーで移動するのが一番便利ですが、博多から直行バスなど
 もあるようなので、そういうものを利用して、現地では観光ガイドを
 お願いしたりするのもいいかもしれないですね。
 観光協会のサイトでは、そういった情報もかなり網羅されているので
 是非見てみるとよいかと思います。 
 高千穂町観光協会 http://takachiho-kanko.info/