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長いトンネルを抜けると、雪国であった」。
これは、川端康成の小説『雪国』の冒頭の一文。

実は、読んだことのない作品なのだけれど、
なぜか印象に残っていて、トンネルを抜けたり、雪を見るたび思い出す。

温暖な気候である瀬戸内で生まれ育った私は、
雪が積もるという経験は、数えるくらいしかない。
雪国の厳しさを知らないため、雪と聞くと、幻想的で美しいイメージが湧いてくる。
だから、この一文から、トンネルを抜けた先が真っ白な世界という想像をするだけで、
一瞬で変わるその世界に、胸がわくわくしたのだ。

生きていれば、いろんな場面に遭遇できるもので、
何度か、実際にも「トンネルを抜けると・・」という経験をしたことがある。

まるで、こちらからあちらの世界。
それは、何度体験しても、
トンネルを抜けた先に見る風景の違いに目を見張り、
同じように続いている空の下なのに、まったく違う天候と景色に、
なんとも神秘的で不思議な気持ちになるものだ。

そして、そんな体験をするたび、
人生もそんなものなのかもしれないとさえ思うことがある。

一瞬にして変わる景色。

私たちの体験はとても自由で、同じように続く空間の先でも、
思いもよらない縁やタイミングに恵まれて、不思議な経験をすることがあるから。

それこそが、生きている醍醐味だと、やっぱり私は感じずにはいられない。

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