海が繋いだ縁。
そう断言してもいいだろうと思えるワンダーな体験を、私はこの数年の間にしてきた。
ある「もの」に対する人の感情の変化が、こうも人生を展開させるとは驚きだ。
ここでお話しする、ある「もの」とは、そう、タイトルのごとく「海」。
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2008年の夏。
ある場所の「海」に出会うまで、はっきりいって、私は海があまり好きではなかった。
私が生まれ育ったのは、瀬戸内海にほど近い田舎町。
ただし、田舎町というには格好のつかない、妙にひらけた広島県第2の都市だ。
家から歩いて行けるほど近くはなかったが、
ほんの少し車に乗れば、そこには海があった。
夏になれば、海水浴は定番の家族行事。
水着になってはしゃぐのは、それなりに楽しかったような気もするが、
海から上がったあと、潮で体中がぺたぺたする感じが、
たまならく嫌だった記憶が残っている。
それでも、本当は、海は嫌いではなかったはずなのだ。
祖母の家からは、海が見え、
その光景は、子どもながら、宝箱のようにお気に入りだったのだから。
それが、どうしたことだろう。
10代になった頃から、そんなに海水浴には行かなくなって、
「海」は、私に悲しい記憶を呼び覚ます感覚を与えるようになってしまった。
なぜなのかは、わからない。
瀬戸内の海は、中国地方と四国に挟まれた内海で、
とても穏やかだ。
島々が浮かび、
陽光が水面にあたると、キラキラと輝く美しい光景も見られる。
その美しさは、私の感情をむやみにあおった。
寄せては返す海の波を見ていると、
もう二度と帰れないあの時と場所を思い出すようで、
悲しくて仕方なかったのだ。
大切で、懐かしくて、でももう戻れないあの場所。
誰かとの悲しい別れをしたわけではなし、
まだ恋も知らなかったというのに。
海を思うと沸き起こる、私ひとりが置いてきぼりになって、
孤独の闇にのまれてしまいそうな体感。
それは、海を「あまり好きではない」と言うに事足りた。
そういう感覚が板についてしまってからは、
小さい頃の楽しかったであろう海水浴の体験も、
海の見える街にいるちょっとくすぐったい嬉しい感覚も、
どこかで固い蓋をしてしまったようだ。
それは、同時に、私本来の無邪気で快活なエネルギーの封印だったのかもしれない。
それでも、人は、自分に正直に生きる道を選び続けていれば、
どこかで本来のエネルギーを花開かせるきっかけを得るものだ。
それが、私にとっては、2008年に出合ったマウイ島の海だった。
「自然をいっぱい感じられるハワイに行こう！」。
親友とそう話してから3年。
ハワイ島に行く心積もりからも一変。
強力なご縁に引き寄せられて、初めてのハワイは、マウイ島一色だった。
青い海。
いろんな海の色があり、青があるが、
そこで見た海の青は、とりわけ私の大好きな色だった。
瀬戸内で見てきた海の色とのあまりの違いに、
満面笑顔でおおはしゃぎ。
お天気は、雲ひとつない快晴。
目の前には、どこまでも美しい青が広がっていた。
それまで、「海」方面へ向かう旅は、
ほとんどしてこなかったため、
この海の青さは、新鮮な驚きと喜びをもたらした。
海に入ったときの体感も、
昔とはまったく異なった。
こんな海なら、何度でも入りたいと思えるほどに、
私は、マウイの海に惹かれた。
海のイメージが一新された瞬間。
そこから、私の人生のなかで、
今まで動かなかった何かが動き始めたのかもしれない。
日本に戻ってからも、海を感じたいと思うようになった。
それは、閉ざし眠らせていた感性の片側が、
やっと開かれたかのような不思議な感覚だった。
人は、眠らせていた感性の扉を開けると、
そこからまた無限の可能性と新しい未来がやってくるのだろう。
マウイから戻り、ほどなくして、ある友人が、
ふいに海を見たくなって逗子海岸に行ったとプレゼントをくれた。
浜辺で拾ったという薄紅色の桜貝。
あまりに可愛らしかったので、
優しくティッシュに包んで、バックに忍ばせた。
心に残る、「逗子海岸」の響き。
そこには、「海」があるんだ。
心惹かれるも、まだ私の足は、海には向かわず。
さいたま北浦和の自宅から約２時間かかる逗子は、
少しばかり遠さも感じる場所だった。
私にとっては未知のエリアだった。
そんな折、マウイの友人繋がりで知り合ったフラダンサーの友人が、
逗子でフラダンスの祭りに出演すると聞く。
その瞬間、何かのスイッチが入れられたかのように、
私の心は、海へと向いた。
フラを観に行こう！
海を感じに行こう！！
逗子へ。
と思った瞬間、何年も前にブックマークに登録した、
ボディケアサロンがふいに浮かんできたのだ。
逗子からバスに乗って数十分かかる海辺のサロン。
その名は、モアナブルー。
何を隠そう、今やこのドアーズの相棒として旅をともにする、
ゆうこりんのサロンだ。
開かれた感性が、新たに紡ぐ運命の糸。
その糸は、私の魂がより輝くほうへ、
喜びと楽しさを全身全霊で感じられるほうへ、
導いてくれるものだったと、数年だった今、断言できる。
こうして私たちは、知り合った。
そして、戸隠に始まり、セドナ、沖縄と奇跡的な旅を繰り返し、
その１年後、こころのドアを開く旅。DOORSドアーズは、生まれた。
その瞬間、瞬間が、最高に楽しくて、
奇跡と発見と感動の連続で、
日常に戻ってからも、生きる力が湧いてくるような旅。
そんな旅を魂が惹かれあう仲間と一緒にしよう。
それを思うだけで、わくわく喜びを胸いっぱいに広げてくれる。
ドアーズは、私にとっても、夢実現のひとつの形だ。
そして、彼女は、海と戯れることを何度となく教えてくれ、
いつしか私の中から、以前感じていたような海への感覚は消えていた。
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海が繋いだ縁。
それは、劇的な人生の変化。
マウイの海に出合わなければ、
そして、海に対する感覚が変わらなければ、
私の人生は、今とはまったく違うものだった。
そして、いま思えばだが、
マウイの海は、私の記憶のどこかに留まっていた悲しみを、
あのとき洗い流してくれたのかもしれない。
不思議な引力だ。
「海」。
さぁ、今ならなんて答えるだろう。
懐かしい感覚。
これは昔も今も変わらない。
悲しいとも嬉しいとも感じず、いまはただ、そう思う。
海の青が好き。
ほとんど海を知らない私ですら、そう思うほどに、
場所場所で、海の青さはまったく違うことに感銘を受ける。
「海」。
さぁ、未来の私はなんて答えるだろう。
きっとこれからもこの感覚は変わり続けるに違いない。
私の感性の扉は、喜びを感じるほうへと、さらに開かれてゆくのだから！
マウイ島ワイユの丘から望んだ海。静かに深く心に響き、私の人生を変えるきっかけとなった。
