wonder18_hama.jpg


深い魂の旅をしたかのような夜が明け、久高島をでたあとは、本島に戻ってどんどん北上。

途中でフルーツ盛り盛りの美味しいかき氷を食べたり、
ゆうこりんが当時サポートしていたフリーダイビングの世界選手権で使うホテルに、ご挨拶に行ったり、そのどれもが私には、真新しいことだった。


すべてが楽しくて、キラキラしていて、むじゃきにはしゃぐ喜びを全身で感じていた。

なにをどうしたって、罪悪感にしばられて生きてきた私にとって、
この旅は、純粋にただ楽しい!と感じられる素晴らしさを体感するようなものだった。

それまで私は、楽しく遊んでいるときですら、旅行にでたときですら、遊ぶことへの罪悪感をぬぐいさることができなかった。いま思えば滑稽な話だ。


そんな私を解放するかのように、「なんにもしないを、しに行こう!」、
そんな発想から始まった旅だった。

昔ながらのいい味を出している沖縄そば屋でランチをしたり、ちゅら海水族館に立ち寄ったり。

それはもう楽しかった!

稚拙な表現しか浮かばず、ただ、「楽しいね~!!」と繰り返していたように思う。

ちゅら海水族館は、いままで見た水族館のなかでもピカイチ!
巨大水槽の前で、優雅に泳ぐ魚たちを、ただただ見つめていた。
いつまででも佇んでいられるような、美しい光景だった。

そんな場所で、ゆうこりんは、またしても、粋な誘いを仕掛けてきた。
「来月、ダイビング体験をしに行かない?」

こんなに綺麗な水の中で泳ぐ美しい生物たちを目の前にして、断れるわけがない。
今度は、この巨大水槽のような海の中へ、私自身がはいるのか・・・。

いままでの私なら断っていたことだろう。
だって、海はあまり得意なフィールドではなかったのだから。

ゆうこりんは、いつも私がわくわくしたところを狙って、
さらに楽しげな展開を提案してくる。
臆病な私に、ちょっとずつちょっとずつ負荷をかけて、
さらにキラキラした新しい世界へと連れ出してくれるのだ。

このプレゼン能力は、さすがだといつも脱帽の思いだ。


さぁ、そうこうするうちに、今回の旅のメインディッシュ、
ゲストハウス結家(むすびや)さんに、辿り着いた。

ここも、ゆうこりんが何年も前に旅人として訪れていた場所だ。

ゲストハウス。
ドミトリーには、二段ベッドが置いてあって、そのひとつを私の場所に与えられる。
食事は、みんなで一緒にわいわい食べる。
フリースペースでは、いつでも誰かとおしゃべりできる。

個室もあるようだったけれど、私たちは、男女混合のドミトリーに泊まることにした。
(そこが一番安い)

食卓には、それぞれが作った料理がちょうど並んだところだった。
そこには、性別も年齢もバラバラ、境遇も異なる人たちが、たくさん集っていた。

なんだか、わくわくする!この雰囲気!!
どこの誰かも知らない人と、一期一会で出会い、楽しく一緒に過ごす時間。
この世界には、いろんな人がいて、いろんな生き方があって、いろんな感じ方がある。

いままでの私なら出会わなかったであろう人たちに出会って、新たな世界を感じる瞬間。
そういう旅のスタイルが、大好きだ。


大人になったら、もうこんな旅は、できないと思っていた。
日本にも、こんな旅ができる場所があるなんて、知らなかった。

自分の知らなかった世界に一歩足を踏み出す時、またそこから何かが始まる。
この旅により、私の中に眠っていた「可能性」の芽が、目覚め始めたようだった。

ちなみに、この2010年から数年後の今、ゲストハウスは日本全国に広がり始めている。
旅人には、嬉しい展開だ。


Hamakouhen1 (800x600).jpg

今帰仁(なきじん)にある結家さんからの眺め。浜はすぐそこに広がる。

この日の夜は、長かった。

有志で夜の浜辺へ行って、海と月を眺めた。
もうそれだけで、テンションが上がる。
時間制限のない自由な夜。
しかも、ここは沖縄の浜辺!

静かな夜に響く波の音。
心地よい潮風。
温かい空気と月の明かりに包まれて、私たちは無邪気に浜辺で遊んだ。


ひとりずつ宿へと戻っていき、しまいには、私と男の子が三人、浜辺に残った。
私より、5歳~10歳年下の男の子たち。

私たちは、ドラム缶のように、海に向かって三人立ったまま、話を続けた。
いまとなっては、何を話したかなんて覚えていないけれど、
いろんなことを語らいあった気がする。

年上のひとと一緒にいることが多く、いつも若い若いと言われていた私だけれど、
このときばかりは、ちょっぴり、年齢を感じた。

いい意味で、私は年を重ねて来たことを認識したのだ。


私たちは、延々、立ち尽くしたまま、話し続けた。
純粋なこころを持った、かっこいい男の子たちで、私は両手に花(笑)
何時間経っても、誰も戻ろうとも言わず、トイレに行ってくるとも言わず、
ただただ、海に向かって、立ち話をした。

次第に、夜が深まっていき、ついには朝方になった。
月が、どんどん海に近づいてゆく。

真っ暗な中、白く輝く月は、波の音と相まって、それはそれは美しかった。

そして、ここで、私は初体験をすることになる!(そっちじゃないよ笑)

お月様が海に沈む瞬間に立ち会ったのだ!!

白い輝きが、黄色に変わって、オレンジ色になったかと思えば、真っ赤になって、
静かな海のなかへと落ちていった。

なんて、妖艶なのだろう。
美しい・・・。
三人とも、初の体験に心が踊り、この世の不思議を見たかのような、感動に包まれた。


ただし、それも束の間。
月が海に落ちると、あたりが、一気に本物の闇に包まれた。
聴こえるのは、海の音だけ。
真っ暗でほとんど何も見えない。
急に怖くなって、三人で逃げるように浜から立ち去って、宿へ一直線に駆け込んだ(笑)

月夜がどんなに明るかったのか、
自然の光の威力を思い知った夜でもあった。


翌日は、男の子とたちと五人で、写真撮影会なるものまでして、
バカみたいに、はしゃぎまくった。
お腹を抱えて笑いまくった。
とにかく楽しくて、心が、ぴょんぴょん飛び跳ねるようだった。

そのあと、また別の男の子とゆうこりんと三人で、近くの島へも行った。
そのときの話は、また別の回に綴ることにしよう。

そしてこの日も、三人で浜を歩いた。
久高島の浜を歩いたときとは、まったく違う心持ちだったように思う。

このとき出会ったみんなは、いまどこで何をしているのだろう。
月並みだけれど、この地球のどこかで、楽しく過ごしているといいなって思う。


「浜」。
数年たった今でも私は、沖縄のエメラルドグリーンの海の色と白い砂浜を身近に感じている。
あのとき感じた爽やかな風が、私の人生には、いまでも吹き続けている。

また同じ場所を旅することがあるなら、きっと私は楽しいなって思うだろう。
けれど、同じ場所をもう一度旅したところで、もうこのときの私と同じことを感じることはない。

旅する場所、一緒に旅する人、出会う人、そのときの気持ち。
それらは、すべてその瞬間だけのものだ。
私にできるのは、その瞬間、その瞬間に感じることを、思い切り味わい尽くすことだけだ。

それが、旅の醍醐味であり、喜びだ。
だから私は、これからも旅をする。

それが、魂の旅って、もんだろう?

hamakouhen2 (600x800).jpg

旅仲間と一緒に、はしゃぎまくって写真撮影会。被写体になって跳ぶ私たち!


hamakouhen3 (800x600).jpg

結家さんの部屋から海と浜を眺める。楽しかった旅の記憶は、胸の中に。