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「ひろかっち、富士五湖のひとつ西湖に、キャンプ一緒に行かない?」。

またしても、突然、ゆうこりんが言った。
2011年、秋のことだ。

また、来た!!(心の声)

こういうお誘いは、突然やってくる。

キャンプへは行ってみたいけれど・・・(心の声)

「予定も詰まり気味だし・・、体力もどうかなって思うし・・、実家(広島)にも帰るし・・、ちょっと考える」。

ちょっぴり言い訳を並べて答えてみる。

すると、これまたいつものごとく、ゆうこりん。

「あ~、別にどっちでもいいよ。ただ、なんとなく、ひろかっちは、ちゃんと楽しい!っていうキャンプ体験をしたことがないじゃない。こういう経験してみると、人生も、またいい感じに変わる気がしたんだよね~」。

と、さらりと答えてくる。

自分でも本当は、わかっている。
言い訳をする前に、心のなかで、「(キャンプへは行ってみたいけれど・・・)」と思ったことを。

最初に感じたこと、それが本音じゃないの?

体力、経済力、時間など、いろんな言い訳を並べ立てて、最初の最初に感じた「行ってみたい」という気持ちを、なかったことにしようとしている自分に気がついた。

私は、まだ自分に制限をかけようとしているのか?
楽しい!って思うことをいっぱい感じる人生にするんだろう?

だから、あえてこう決断した。

「私も行く!!」、と。

やってみなくちゃ、わからない。
体験してみなくちゃ、感じられない。

感じてみて、初めて広がる世界があることを、私は知っているから。

そして、こういう体験は、必ず自分の人生の枠を広げてくれる。
枠を広げるということは、人生がさらに楽しく展開していくという確信がある。

というわけで、富士西湖キャンプへの飛び入り参加が決定したのだった。

河口湖や山中湖は、よく知っていたけれど、西湖は初めて。
未知の場所に向かうのは、わくわくする。

私が、このキャンプを決めたもうひとつの理由は、「西湖」という響きだった。
なぜか、この湖に行ってみたいと思ったせいもあったからだ。

なにかこころが惹かれるというのは、ご縁があって、きっとその場所も私を呼んでくれているような気がするのだ。

そういう感覚には、素直に従うようにしている。

さぁ、そこにはどんな湖が広がっているのだろう。
そんな期待とともに、車に乗り込んだ。

*******

ある望遠鏡メーカーの星空観測会に合わせてのキャンプ。
せっかくなので、私たちはイベントの前日から乗り入れ、2泊することにした。

私のキャンプ初体験は、中学校の林間学校だった。
牛が踏んでホースが破れ水がでなかったり、テントの中に虫がうじゃうじゃいたり、散々な記憶だ。

そのせいで、キャンプは敬遠してきた。

けれど、ハワイのマウイ島や沖縄、屋久島へ旅をすることに目覚めてからは、自然のなかで思い切り遊ぶことを、なによりの喜びと感じるようになっていた。

ドライブしながら、美味しそうな天然酵母のパン屋さんや手作りソーセージのお店で、食糧を調達していく。
ひとつひとつが、楽しくて、うきうきわくわくする気持ちで、全身が埋め尽くされていく。

温泉にはいってほっこりして、思わず、「楽しいね~♪」と、また5歳の子どものように連発していた。
青い空と白い雲、心地よい風とともに、自然とほほがゆるんでゆく。

ゆうこりん以外の3人は、初めて出会う人ばかりだけれど、それもまた面白い。
そのときにしか出会えない人がいて、そのときだから重なり合うご縁。

そういうのを大切にできる人生は、本当に素晴らしいと思う。


さて、富士西湖にあるキャンプ場は、想像を遥かに超えて設備が整っていて、綺麗だった。

ゆうこりんが、アウトドアの鉄鍋ダッチオーブンで、腕を振るって料理を作ってくれる。
これがまた、とびきり美味しいのだ!

みんなで準備をして、「いただきま~す♪」。
外で食べる料理は、格別だ。


そうこうするうちに、夕暮れから星空へと時刻が移る。
自然のなかにいると、時間ではなく、体感で自然の営みを感じる。
そのなかに身をまかせていると、私は本当に、ひとつの生物にすぎないのだと実感する。

おしゃべりしたり、星の写真を撮ったり、ちょっぴりテントで休んだり、みんな銘々に好きなことをして過ごす時間。

このゆる~い感じが、大好きだ。

そして、まだまだ夜は続くのであった。


(つづく)

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綺麗なお風呂や洗い場も設置されている、素敵な富士西湖のキャンプ場。


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作業は、自分たちの巣を作り上げていく感覚。テントやタープを張るのも新鮮で楽しい。

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暖をとる焚き火の炎を眺めていると、自然と本音で語らい合っているから不思議だ。

夜は、焚き火を囲って、イベントに集まったいろんな人と話をした。

火のゆらぎは不思議だ。
自然とこころが緩んで、性別も職業も境遇も感じさせなくなる。

こういう時間を忘れて語らい合えるのも、キャンプの魅力だなぁと、その場で身を置ける自分をしみじみ幸せだと感じていた。

そして、寝静まった、真夜中。
10月の富士西湖の夜は、思いのほか寒かった。

特に初日は眠れず、何度もトイレに起きて、ひとりこっそりテントを出た。
寒いよ~と思うと同時に、空を見上げると、そこには満点の星空が広がっていた。

寒くて震えながら起きたご褒美?!
テントと森と、そばには優しい湖、美しい星空。
思わず両手を広げていた。


翌日も早朝に目覚めて、トイレに行った。
寒いので、このまま起きて散歩をしながら湖を前に夜明けを迎えることにした。


あ!!
三日月と金星がランデブー!!

同じく目が覚めて、一足先に湖まで散歩に行ってきたというゆうこりんと遭遇して、二人で叫んだ。

そういえば、星読みという星占いサイトに書いてあった。
今日は、三日月と金星が接近する特別な日だという。
藍色の空に光る月と星は、それはそれは輝いて綺麗だった。

「ギフトだね~」。
今まで、いろんなことがあったけれど、こういう一瞬に出会ったとき、あぁこの地球に生まれてよかったなって思う。

「それを見ると幸せになれる♪」かどうかは、知らないけれど、乙女な私のこころは、寒さも忘れて晴れやかなのだった。

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三日月と金星のランデブー。

いい気分になって、ひとりで湖まで歩いていった。

シーンと寝静まった湖。
藍色の水と藍色の山々、藍色の空。
全部藍色なのに、肉眼ではそれぞれ違う藍色に見えるから、自然のグラデーションって絶妙で美しい。

三日月の月明かりとほのかに夜が明けようとする光で、あたりが照らされている。

ひとり佇み、夜明けとともに刻々と変わる湖の様子を眺めていた。

藍色から、世界に光が射して、ピンクに染まり始める。
湖面からは、水蒸気が上がり、さらに幻想的だ。

水辺は、思いのほか暖かい。


湖の向こう岸から、ボートをこぎ出した親子が、こっちに向かってやってくる。

「おーい!!」。

ボートから少年の声が聞こえる。
良く見ると、私に向かって手を振っている。

小学校3、4年生くらいだろうか。
目をきらきらさせた少年だ。

岸辺から、大きく手を振り返した。

「おーい!!」
また少年が手を振りかえす。
オールを漕ぐ、お父さんらしき男性が、にっこりほほえんでいる。

なんて、のどかで平穏な湖畔のひとときだろう。


そうこうしているうちに、夜は明け、あたりは明るい朝に変化していった。
さっきまでのあの幻想的な姿は、どこに隠れてしまったのだろう。

私たちは、地球の営みのなかに包まれて生きているんだなぁと、改めて思った。

湖には、ちょっぴり神秘的なイメージがある。
朝は、特にその湖の普段見せざる素顔を見せてくれるようにも感じる。

刻々と色が変わって昼間の顔に装いを変える、夜明けのシーン。
それは、私が朝起きて、顔を洗って、歯磨きをして、服を着替えるような、湖にとっては日常なのかもしれない。

なんだか西湖のプライベートに立ち会わせてもらった気分になって、これまた幸せな気分になるのだった。



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ほのかに夜が明け始める。

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微妙な色の変化。まるで湖が起きて、お化粧をし始めたようだ。

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ピンクに染まった雲が湖面に映る。ほほ紅もつけたかな。

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夜が明けた。蒸気が立ち込め、山々がいつもの姿を現わす。今日の活動開始!

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昼間の顔。とっても平穏でピクニックに来ても最高のロケーション。みんなでひと休み。